日之影町当たりからポツポツと大粒の雨が降り始めた。「梅雨が明けたら、夕立ちだよな」などと、一人合点しながら車を走らせたが、土呂久に着いた時には土砂降りの大雨。長靴はいつも車のトランクに入れてあるし、渋谷の無印良品で先月買ったばかりの折りたたみ傘がリックサックの中に入っているのを意識しながら、準備周到だなとほくそ笑んだ。
土呂久で、鉱山の痕跡を確かめられるのは、大切り坑口だけである。大切り坑前の坂道は、車が流されるのではないかと思えるほど、滝のように雨水が流れている。
ともかくここまで来たら躊躇は無用。車の中で、ローライフレックスにプロビア100Fを詰めた。長靴を履き、無印良品の折りたたみ傘をさして、車の外に出た。みるみる水滴で体中が湿っぽくなる。立ち入り禁止の立て札を無視して、鉄条網を回り込んだ。土呂久川に架かる鉄板製の工事用橋の上から見ると、土呂久川は長雨に続く土砂降りで、赤土色の濁流が荒れ狂ったように流れていた。(写真1)

大切り坑口から噴き出す砒素を含んだ坑内水を止める工事は、いつからか中断されたままになっている。入口が鉄格子で塞がれて入ることはできない(写真2)が、工事用の道具が内部に見える。入口近くには発電機やコンデンサーも置いたままだ。

大切り坑口から流れ出した坑内水が、濁流の土呂久川に流れ込む。(写真3)

土砂降りの雨で煙る大切り坑口付近。(写真4)

とっぷりと日が暮れても、雨は止まなかった。
佐藤ハツネさんと直さんが、不平も言わず土呂久山荘で午後3時から待っていてくれた。8月5日と6日に高千穂町自然休養村管理センターで開催される「おいしい水俣・土呂久展」で、ハツネさんに話してもらう被害者の体験談を打ち合わせた。
ハツネさんは、被害を受けている住民の味方をしなかった当時の岩戸村を批判している内容に「こんげなこつを言うて、いいじゃろかね」と、しきりに気にしていたが、ハツネさんにとって最も記憶に鮮明な体験を話てもらうことが、土呂久鉱毒事件を知ってもらう一番の説得力になる。それに、当時の行政の姿勢を批判することで、現在の高千穂町の行政が何らかの感情を持つとは思えない。ハツネさんにしてみれば、高千穂町内で自分の体験を話すことは、遠い土地で話すのとは勝手が違うのだろう。
「おいしい水俣・土呂久展」は、高千穂町民に土呂久鉱毒事件を知ってもらう良い機会になるだろう。ぜひとも多くの人に来て欲しいものだ。
私のホームページのNewsを参照。
さて、あまりに腹立たしいから最後に書いておきたいことがある。
この日初めて使った無印良品の折りたたみ傘は、不良品なのか日傘だったのか、ほとんど傘の役割を果たさないで雨が漏り、全身は言うまでもなく、カメラまでびしょ濡れになってしまった。


間違えて「日傘」を購入してたら、目医者にも(歯医者だけでなく)行きましょう。
土呂久は行ったことがありません。機会を作ってご一緒させて下さい。