東京の民放テレビ局ディレクターから、4週間ほど前に、宮崎の観光地として知られる「青島」の自然を、「森」をテーマとしたドキュメンタリー番組で取材したいので、出演し協力してほしいと電話依頼があった。写真集「生命の惑星 青島」を出していることが、私に依頼した理由だった。しかし、私としては、テレビで話すほどの樹木に対する知識はないのに、出演すれば迷惑を掛けると思ったので、青島の樹木に詳しい研究者を紹介したのだが、出演交渉が上手くいかなかったようだ。
結局、私が出演を引き受けることになって、ディレクターから3、4回、携帯電話の電池が途中で無くなるほど長い電話があり、番組の内容について打合せをした。14日は、彼が「ロケハンに宮崎に行くので、青島の現地で打合せ」という段取りだった。
ところが、2日前、ディレクターから、取材先の私の携帯電話に連絡があって「番組スポンサーの住友林業から連絡があって、『土呂久鉱害の被害者を支援していた芥川を出演させるな』ということになりました。ご了解下さい」と、申し訳なさそうに言う。
私は、少々驚いた。
それより数日前に、そのディレクターから電話があって「芥川さんの経歴を調べさせてもらいましたが、土呂久鉱害に係わっておられたようですが、住友林業がスポンサーの番組ですが、構いませんか」と、問われた時、「まったく抵抗がないと言えば嘘になるけど、1990年に土呂久の裁判は最高裁で和解しているし、それからは何も敵対関係はないので、直接の敵対関係にあった住友金属鉱山がスポンサーなら話しは別だが、住友林業ということなら、私は構わないけど……。住友銀行を使わないとか、VISAカードを持たないとかの抵抗は今でもしているけどね」と、私は冗談も交えて答えていた。
私の認識が甘かったという他ない。住友財閥は、土呂久鉱害の被害者を支援した者を、和解から22年経った今日でも恨んでいるのだ。
ひょっとしたら、社会の仕組みというものは、このような力関係で動いているのかも知れないと思うと、空恐ろしい気分になった。
おめおめと油断なさるな!! 皆々方。
具体的内容は分かりませんが、主婦を企業が提訴するとは、尋常ではないですね。