取材に出ている時、突然、空白の時間が訪れることがある。そんな時は、一番に映画を観ることにしている。という訳で映画へ行く。
地下鉄で有楽町へ。有楽町マリオンのポスターを見てみたが観たい映画は「ドリームガールズ」くらいだ。しかし、「ドリームガールズ」は宮崎でも観られる。銀座通りの近くにシネスイッチ銀座があったはずだ。
ここでは「モーツアルトとクジラ」と「カンバセーションズ」が上映中。どちらも知らない映画。さて、迷った。「カンバセーションズ」は、大人の恋愛物のようだ。「モーツアルトとクジラ」は、ポスターだけでは何か分からない。こちらに賭けてみよう。
観て、損はなかった。
アスベルガー症候群という自閉症の男女が、自分をさらけ出し、相手を思いやりながら、ぎくしゃくと恋を育んでいく。同じような症状を持つ仲間の人々も魅力的だし、優しさに満ちていた。
自分が自分らしくあることの大切さと日常の中で自分らしくあることの難しさを考えさせられた。
彼らは、同じ症状を持つことで、結ばれた閉鎖された小さな社会を築いているが、誰もが自分をさらけ出すことによって、誰かを傷つける。傷つけたことを後悔し、優しさが芽生える。一般の社会でも同じことをしているのだろうが、全体にオブラートで包まれ、その分見えにくくなっているし、複雑にしてしまっている。社会の、人々の何がそうさせているのか。
「モーツアルトとクジラ」を観て、そんなことを考えた。
シネスイッチ銀座での映画が終了して、クレジットが流れ始めた。宮崎だったらこの時点で、ほとんどの観客が席を立って客席が明るくなった時、客はすでに居ないのだが、シネスイッチ銀座は違った。誰も席を立たない。余韻を楽しむように、クレジットを見て、テーマ音楽に聞き入っていた。
映画好きな人々なのだ。それだけで嬉しくなった。
今日は、写真はありません。