今夜、宮崎アートフェスティバル(MAF)2007の実行委員会が開かれた。いずれMAFについては案内をするが、ここでは私が毎日通勤に使っている自転車ロードレーサーの話。
この写真は、およそ18年前、私がまだ週刊誌の仕事をしている頃に衝動買いをした自転車だ。乗ったり、乗らなかったりしながらも、愛着のあるロードレーサーである。買った時のフレームは、ブルーメタリックで格好良かったが、3年前、少しサビが浮いてきたので、自分でエナメル塗料を塗ったら、くすんだ青になってしまった。
このロードレーサーを買った前夜、私は週刊誌の仕事で、春期キャンプで宮崎に来ていたジャイアンツの選手が、繁華街のある店から出てくるところを撮影するために張り込みをしていた。しかし、道ばたでカメラを持って立っていればすぐにばれてしまうので、店の様子が伺える場所に身を隠さなければならない。
ちょうど、そのある店の真向かいに深夜まで営業しているラーメン屋があったので、そこのカウンターに陣取った。
「オヤジさん、ラーメン一杯。ちょっと長居するかも知れないけど」
「ええよ、ゆっくりしときな」
特に顔見知りではないが、気さくな感じのオヤジだ。ふっと、店の天井を見ると、細いタイヤの自転車が逆さまで宙づりになっている。
「え、何やこれは? オヤジさんがこれに乗るんですか」
「そうだよ。自転車はいいよ。前はな、ラーメン一杯作るたびに、イスに座らんとやれんかったちゃけど、今は、一日中立ちずくめでも平気なっちゃが」
「ええっ本当ですか!!」
「あんたね。自転車はそれだけじゃねえつよ。知っちょるや、自転車は地球上のありとあらゆる乗物の内で、一番エネルギー効率のいい乗物じゃつよ。自転車と言うてん、ママチャリはダメよ。ロードレーサーじゃねえと、ロードレーサー」
「ロードレーサーちゅうとが、これですか」と、天井を指差す。
オヤジさん、得意げにうなづく。
「タイヤが細いやろ。あん細いタイヤに人間を乗せるとやかい、空気圧が8気圧も入っちょとよ。石みてえに硬えとよ。じゃかい、タイヤの着地面積は切手一枚分しかないとよ。摩擦の抵抗が少ないちゅう訳よ。人間がペダルを漕いだエネルギーのほとんどが前進エネルギーになるちゅう訳よ。人間の心臓と肺がエンジンよ。ロードレーサーは、ペダルに足を縛り付けて漕ぐから、踏むだけじゃねえして、引き揚げることもする訳。じゃかい、自転車を漕ぐエネルギーは半分でいいつよ」
これは、すごい!!
オヤジさんの話は、まだまだ続くが、今日はここまで。
この夜の張り込みは、オヤジさんの自転車の話に夢中になってしまい、ジャイアンツの選手がある店から出たのに気付かなかった。デスクから、大目玉を喰らったのだ。
もちろん私は、さっそく翌日、当時高校生だった息子を連れて自転車屋へ。